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ゲーテが「複式簿記は最高の発明」といっているという通説の嘘

大学のとある授業でこんなことを聞いたことがあります。

あの文豪ゲーテも「複式簿記は最高の発明」と言っている、と。


大学時代、会計に全く興味が持てなかった僕は

「へぇー、あのゲーテがね-。
 簿記とゲーテ、どこでつながるんだろう?」

とか思いつつ、ゲーテがそういうからにはすごいんだろう、
なんて思っていました。


あ、ちなみに複式簿記とは、借方・貸方に分かれている
現在使われている方法・形式です。

14世紀の半ばに生み出されて以来、
根本的なところは大きく変わっていないっていうんだから
確かに恐ろしいほどの発明です。


ゲーテが簿記を誉めている、っていうのは有名なことらしく
会計の入門書でもそういった記述がちらほら。


確かに説得力が増すというか、
なんだかすごいものだなって思います。簿記が。


…でも本当にゲーテは簿記を賞賛していたのか?

今回は、そんなことを考えていきたいと思います。

ゲーテが簿記を「最高の発明」と絶賛した。

引用元ははっきりしています。

『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』です。

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……うん。小説が引用元な時点で嫌な予感はしてました。


『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』なんてタイトルだから
商売でもしているひとの物語なのかなーと思って、

読もうとしたのですが、こんな解説が。

舞台は18世紀封建制下のドイツ。一女性との恋に破れ、演劇界に身を投じた主人公ヴィルヘルムは、そこで様々な人生の明暗を体験、運命の浮沈を味わう。



簿記が関係しそうな余地がない…。


とりあえず、上・中・下、3巻とも購入したのですが
読みたかった箇所は上巻の54ページと、思いの外すぐでした。


ではでは、さっそく引用を。

「商売をやってゆくのに、広い視野をあたえてくれるのは、複式簿記による整理だ。整理されていればいつでも全体が見渡される。細かしいことでまごまごする必要がなくなる。複式簿記が商人にあたえてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が産んだ最高の発明の一つだね。立派な経営者は誰でも、経営に複式簿記を取り入れるべきなんだ」



おおぉー!

べた褒めしてるじゃないですか!?


……と思うなかれ。

さらに続きが。


「失敬だが」とヴィルヘルムは微笑みながら言った。「君は、形式こそが要点だと言わんばかりに、形式から話を始める。しかし君たちは、足し算だの、収支決算だのに目を奪われて、肝心要の人生の総計額をどうやら忘れているようだね



!!

……そうなんです。

初めの発言、つまり簿記を「最高の発明」と褒め称えているのは主人公の友人であって

『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』の主人公、ヴィルヘルムは
簿記を褒めそやしている友人を冷ややかに見ています。


うーん、これは…。

その後も友人は、話を続けますが
どうひいき目に見ても、うっとうしく書かれています。


……。

この一節をもって、

「ゲーテが複式簿記のことを最高の発明と言っている!」

なんて言ってしまうのはいかがなものなのかと。

個人的には、ゲーテの考えは
主人公が代弁しているような感じも…。



小説の一人物が発した台詞を、あたかも作者の主張のように捉えるのは
問題大ありですね。

たとえば、『ヴェニスの商人』の中でシャイロックが

だがこっちが出かけるのは、憎いからだ。あの贅沢三昧のキリスト教徒、食いつぶしてやる。

と言ったからといって、
シェイクスピアがキリスト教を批判している、とはなりませんよね。

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うむむ。

かなり残念な結果に。


やっぱり小説が引用元な時点で、
著者の主張とは全く関係がない、ってことを意識していないとダメですね。

名言集などでも
小説家の言葉は、本人の言葉ではなく
登場人物の言葉だったりすることが多いですし。


念のために書いておくと、
複式簿記はすごいですよ?

大学時代は、あまりにも意味がわからなかったので
途中で挫折し、一夜漬けで試験を乗り越えましたが

しっかりと基礎から学んでいくと、じわじわとすごさがわかってきます。

簿記を「美しい」なんて表現するひともいますが
その気持ち、ちょっとわかっちゃいますもん。


でも、だからといって
ゲーテを無理に引っ張ってくるのはいただけない。



初心者に簿記の有用性を伝えたいがために
あえてちょっと曲解しているのを理解したうえで
ゲーテの偉大さを利用するために使っているのか。

それとも「ゲーテが最高の発明と言ったらしい」という
噂(?)が一人歩きしたのか。


もし後者なら、残念。

原典に当たるという基本が忘れられているということになりますから。



ということで、結論は

ゲーテは『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』のなかで
主人公の友人に
「複式簿記が商人にあたえてくれる利益は計り知れないほどだ。
人間の精神が産んだ最高の発明の一つだね」
と語らせている。
ゲーテ自身の言葉ではない。


でした!


でもまあ、長々と書いちゃいましたが
あらためて考えると、大してこだわるところでもなかったような…。



すでに上・中・下巻を買っているというのにこんなにも早くわかってしまうとは。


今どきの読書術では、
本を読む目的を達成したら、もったいないなんて思わず
読むのをやめる、というのがセオリーですが。

さて、この場合はどうしたものでしょう?
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昨日よりきょう、少しでも成長していきたいと思っています。ここでは主に本の紹介をしています。

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